10年目の授かりもの
29才の時、初診で来られたM子ちゃん。ひどい肩痛と頭痛で来院されてから12年。10年前に結婚し、子供ものぞんでいましたが双角子宮ということもあり、生理不順や不正出血、造血剤を打たないといけないほどの貧血、その他諸々の不調を常に訴えその都度治療する中で、自然と子供のことは言わなくなっていきました。自らの体を守ることでせいいっぱいだったのです。
月に数回、鍼灸治療を継続していましたが、気が滞り精神が不安定な状態と、三陰交や公孫など婦人科に関わる穴所に整えの灸を31壮すえても熱さを感じないという、気血が弱っている状態が長く続きました。貧血改善の食事を気をつけながら漢方薬も服用し、ヨガや他の軽い運動も積極的に行うようになったことで硬い体が少しずつほぐれ、専業主婦でしたがパートも少しずつできるくらい元気になりました。そんなある日、彼女の口から出た耳をうたがうような言葉。
「先生、妊娠したみたいです」
授かりものとはこのことです。結婚して10年目、42才と52才の夫婦。西洋医学の不妊治療は全く行わずの自然妊娠です。妊娠したいという気持ちも忘れるくらい、充実した毎日を過ごしていたM子ちゃんに、神様が授けてくださった奇跡の赤ちゃん。東洋医学の不妊治療では、正気が足りず妊娠できない場合、母体の余力ができれば自然と妊娠すると考えます。高齢ではありますが、長年治療し、養生したことで、後天の気がしっかりし、若いころより元気になったのでしょう。
とはいえお互いに不安もありました。ちゃんと育つだろうか。母体はもつだろうか。実際にM子ちゃんから「妊娠は嬉しいけれど、本当に産んでも大丈夫なんだろうか」と涙ながらに相談された時は私も戸惑いましたが「あれこれ心配しすぎるのも母体に良くないから、あとは自然に任せてみたらどうかな」とこたえ、鍼灸治療で支え続けました。
そんな心配をよそに、妊娠中は思ったより順調で、心配した貧血も出ず、8ヶ月で一度逆子になりましたがそれも鍼で治り、猛暑の中、9ヶ月に入ったあたりからお腹のはりがきつくなったため、帝王切開の日まで入院となりましたが、平成28年8月30日に元気な2556gの男の子を出産しました。産後の不調やカン虫ぎみの赤ちゃんも鍼で治療しつつ、母乳もよく出て、優しいご主人と一緒に育児奮闘中のM子ちゃんです。(院長記)

孝輔くん「はじめましてボク、生まれてきたよ。皆さんよろしくね
」